「久しぶりに万年筆を使おうとしたらインクが出ない」、「保管前に洗いたいけどやり方がわからない」など、万年筆のお手入れで困った方もいるのではないでしょうか。
万年筆は、正しくお掃除すれば、その名の通り長く愛用できる文房具ですし、実はインクのセットやお手入れ方法もとっても簡単なんですよ!
今回は、万年筆をお手入れするタイミングや種類別の掃除方法、頻度などを紹介していきます。
カートリッジ式の万年筆のお手入れ
コンバーター式の万年筆のお手入れ
尾栓回転式の万年筆のお手入れ
インクが出ない・落ちないときのお手入れ
万年筆を愛用している方はもちろん、これから購入を考えている方もぜひ知っておいてくださいね!
万年筆にお手入れが必要なサイン
万年筆を使っていて、インクの色を変えたいときは当然、水洗いしてお手入れしてからインク交換となりますが、インクの出などおかしいなと思ったときはお手入れのサインです。
以下のようなサインがあれば、万年筆をよく洗いましょう。
インクの出が悪くなったとき | 細かい紙のくずが詰まったり、インクがペン芯の内で固まったりして、インクが流れにくくなっている。 |
しばらく使う予定がなく、保管するとき | インクを入れたままだとインクが固まって次回書けなくなるのでお手入れしておく。 |
長期間使用しなかったため、新しいインクを入れたもののかけないとき | 久しぶりに使う場合は古いインクが固まって新しいインクの流れを阻害している。 |
万年筆の名称や種類
引用元:SAILOR
万年筆をお手入れする際には、仕組みを知っておく必要があります。
万年筆の名称、特に『ペン先』『大先』『胴軸』『尾栓』を頭に入れてお手入れしていきましょう!
万年筆の種類
- カートリッジ式
- コンバーター式
- 尾栓回転式
万年筆はインクの吸入方法によって3つの種類に分けられます。それぞれの万年筆のお手入れ方法を見ていきましょう!
カートリッジ式の万年筆のお手入れ方法
カートリッジ式の万年筆は、カートリッジを取り付けるだけで書くことができ、交換も手を汚さずカートリッジを替えるだけの手軽な万年筆です。
- フタを外して胴軸を外しましょう。
- 大先からインクを引き抜きます。
- 水が入ったコップに大先を入れ、1晩放置しましょう。
- 水道水をペン先に向かって通して洗います。
- やわらかい布で水気を拭き取りましょう。
コンバーター式の万年筆のお手入れ方法
吸引したりカートリッジにしたりと、気分によって替えられるのがコンバーター式。普段は吸入式でインクを補充し、外出の際はカートリッジを持ち歩くという使い方ができます。
- フタを外して胴軸を外したら、水を入れたコップにペン先部分を浸します。
- インクを吸入するようにコンバーターのノブを回して水を吸いましょう。
- 今度はコンバーターのノブを反対に回して中の水を排出させます。
- 吸入と排出を5~6回ほど繰り返してください。
- コンバーターを大先から外し、コップの水を替えて大先全体を1晩浸け置きします。
- 水道水をペン先に向かって通して洗いましょう。
- やわらかい布で水気を拭き取ってください。
参考動画:インキの入れ方(回転式コンバーター)
尾栓回転式の万年筆のお手入れ方法
コンバーター式よりもたくさんインクを吸入できるので、長時間書きたい人向けの万年筆です。
- 汚れ防止にティッシュペーパーを敷き、尾栓を回して中のインクをティッシュの上に出しましょう。
- 水が入ったコップにペン先を浸し、インクを吸入する容量で水を吸入してください。
- 数回、吸入と排出を繰り返しましょう。
- やわらかい布で水気をよく拭き取ってください。
参考動画:万年筆のインクの補充方法 吸入式(尾栓回転吸入式)
インクが出ない、落ちない万年筆のお手入れ方法
こすっても落ちないインクがこびりついている、つまってインクが出ない万年筆は、アスコルビン酸を溶かした洗浄液を自作してお手入れしてみましょう。
特に耐水性のある古典インク(没食子インク)の場合は、水に浸け置きしてもインクの詰まりや汚れは落ちないため、古典インク汚れ落としの効果(酸化鉄を落とす)のあるアスコルビン酸(ビタミンC)を使ってみてくださいね。
手順
- アスコルビン酸を水に溶かした洗浄液を作る(水の量に対し1%のアスコルビン酸)
- 洗浄液の中に万年筆を浸け置き
- 洗浄液を洗い流す、乾燥
アスコルビン酸は食用で問題ないですが、糖分など余計な成分が含まれていないものを選びましょう。また、浸け置き時間は、数十分ほどでインクが溶け出すため、汚れの程度にあわせて調節してください。
洗浄液に浸けた後は、水道水でしっかり洗い流してください。場合によっては水道水に浸け置きし直すのも良いですね!
参考記事:インクの汚れ落とし=アスコルビン酸=
クエン酸は代用できる?
アスコルビン酸と似た性質にクエン酸がありますが、クエン酸には酸化鉄を落とすほどの効果はないため、期待は薄いです。
しかし、インキに含まれる成分にアルカリ性がある場合は、酸性のクエン酸も一定の汚れ落とし効果が期待できます。
重曹は使える?
残念ながら重曹は万年筆のインク落としには効果はありません。重曹自体がアルカリ性のため、同性質を持つインクを落とす作用は期待できないです。
万年筆を長く使うためのポイント
万年筆を長く使っていくためには、日々のメンテナンスが欠かせません。
以下のポイントを抑えて、万年筆を長く愛用していってくださいね!
毎日使うことが1番のメンテナンス
万年筆が書けなくなる主な原因は、ペン芯の内部でインクが固まってしまい、インクが出にくくなってしまうこと。
インクが固まるのを防ぐには、毎日少しでも良いので書いてインクを出すことが大切です。
万年筆を洗う頻度は月1度が目安
万年筆を毎日使ってインクの詰まりを防げても、手あかなどの汚れが付いてしまいます。
ペン先は精巧に作られているので、汚れが溜まらないよう月に1度洗浄してお手入れしましょう。
月に1度がむずかしい場合は、せめて2~3か月に1度は洗浄してくださいね。
洗浄してもダメなときはメーカーで洗浄or交換を!
万年筆を何十年と使い続けていると、ペン先が摩耗するなどして傷付いていることがあるので、洗浄してもダメなときはペン先の交換を検討しましょう。
水洗いしてペン先の交換を行っても書き味が戻らないときは、ペン芯を交換してみてくださいね。
もし、自分で洗浄することや交換がむずかしいと感じるときは、メーカーに相談して洗浄・交換してもらいましょう。
まとめ
万年筆の1番のお手入れ方法は、毎日使うこと。毎日少しでもインクを流してあげることでインクの詰まりを防ぐことができます。
長期間使用しないとき、インクが固まってしまったとき、インクを交換するときなどは、万年筆の種類を確認し、ご紹介したお手入れ方法で洗浄してくださいね。
自分で洗浄したり、パーツを交換したりするのがむずかしいときは、お持ちの万年筆のメーカーに問い合わせてみましょう。
万年筆は、その名の通り、大切に使うことで長く使える文具です。万年筆を定期的にお手入れして、長く愛用していってくださいね!